V.適応症の表示記載方法

化学療法学会より提出された報告書を基に、既存の抗菌薬の効能・効果について検討を行い、適応症名を次の原則に従って読替える。
適応症新旧一覧
1) 昨今、使用されることの少なくなった疾患名について
現在、日常的に使用されている疾患名に変更する。
 
2) 従来使用されていた括弧書きについて
括弧内に記された内容が“例示”であるか、“限定”であるかが不明瞭であったことから、括弧書きの使用を可能な限り避ける。
例) 上気道感染症(咽・喉頭炎、扁桃炎) → 咽頭・喉頭炎、扁桃炎
 
3) 経口薬では十分な効果が期待できない疾患については経口薬の適応症より削除する。
例) 化膿性髄膜炎,敗血症など
 
4) 点眼薬以外では十分な効果が期待できない疾患については、点眼薬以外の適応症より削除する。
例) 結膜炎,眼瞼炎など
内用薬     注射薬
 
5) 注射剤が必要とされる疾患ではないことから、注射剤の適応症より削除する。
例) 麦粒腫など
 
6) 「皮膚科領域感染症」について
「せつ」「よう」など個別の疾患名で記載されていたものを「表在性皮膚感染症」「深在性皮膚感染症」「慢性膿皮症」に分類した。なお、「リンパ管炎」「リンパ節炎」については、これら3疾患とは異なる病態であることから、「リンパ管・リンパ節炎」として別に記載する。
 
7) 点眼薬における「術後感染症」の適応症について
臨床試験において検証されているのは、眼科周術期における外眼部の無菌化の効果であったことから、「眼科周術期の無菌化療法」とする。
 
8) 疾患名に菌名が付帯されているものについて
菌名は菌種名に記載し、適応症には疾患名のみ(「クラミジア肺炎」であれば、「肺炎」)と記載する。
 
9) 疾患の本態自体が感染症ではない疾患(「気管支拡張症」、「びまん性汎細気管支炎」など)について
@ これらの背景を有する患者における呼吸器感染症に対する有効性が確認されている場合は「慢性呼吸器病変の二次感染」とする。
A それ以外の場合は削除する。
 
10) 「腸炎」(「カンピロバクター腸炎」、「赤痢」など)について
「感染性腸炎」に統一する。なお、「腸チフス」については、抗菌薬の投与期間などが他の感染性腸炎と異なることから、「感染性腸炎」には統合せず、「腸チフス」として記載する。
 
11) マイコプラズマ」、「クラミジア」、「レジオネラ」について
従来は、「マイコプラズマ」、「クラミジア」、「レジオネラ」は分離同定が困難であったことから、「異型肺炎」、「非定型肺炎」などの名称により、「細菌性肺炎」と区別されていた。しかし、今日ではこれらの病原微生物についても分離同定・抗体検査などが可能となったことから、抗菌スペクトル、臨床成績などを確認した上で、「肺炎マイコプラズマ(マイコプイラズマ・ニューモニエ)」、「肺炎クラミジア(クラミジア・ニューモニエ)」、「肺炎レジオネラ(レジオネラ・ニューモフィラ)」などを適応菌種に加え、疾患名については「肺炎」とする。
 
12) 「歯科・口腔外科領域感染症」について
これまでの疾患名を「歯周組織炎」「歯冠周囲炎」「顎骨周辺の蜂巣炎」「顎炎」に統合する。
 
13) 「外傷創感染」、「手術創感染」、「熱傷感染」などについて
「外傷・熱傷・手術創等の二次感染」に統一する。ただし、「びらん・潰瘍の二次感染」、「感染性褥瘡」については、その病態が異なることから、「外傷・熱傷・手術創等の二次感染」には含めず、別に記載する。
 
14) 「顎下腺炎」、「耳下腺炎」について
「化膿性唾液腺炎」に統一する。
 
15) 「急性膵炎」について
多くの場合が感染症ではないことから、削除する。
内用薬     注射薬
 
16) 「尿道炎」について
その起炎菌は「クラミジア・トラコマティス(トラコーマ・クラミジア)」もしくは、「淋菌」である。
内用薬     注射薬
 
@ これらの菌種が適応菌種に含まれない薬剤については、「尿道炎」を削除する。
A 「淋菌」が適応菌種に含まれ、「クラミジア・トラコマティス(トラコーマ・クラミジア)」が適応菌種に含まれず、かつ、適応症に「淋菌感染症」が含まれる場合
「尿道炎」は、「淋菌感染症」に統合する。
 
17) 「子宮頸管炎」について
@ 適応菌種に「淋菌」もしくは「クラミジア・トラコマティス(トラコーマ・クラミジア)」が含まれる場合は、「子宮頸管炎」とする。
A 「淋菌」もしくは「クラミジア・トラコマティス(トラコーマ・クラミジア)」が含まれない場合は、「子宮内感染」に読替える。
 
その他
1) 表記方法について
(ア) 従来、抗菌薬の適応症は「(菌種名の羅列・・・)による下記感染症」などの表記方法が用いられていたが、今回、これを〈適応菌種〉〈適応症〉と別々に記載する。
(イ) 「適応菌種」、「適応症」の記載順については、統一されていなかったが、今回の再評価で統一し記載する。


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